恋をしたのはお坊様
「ただいま」
玄関から隆寛さんの声。

「おかえりなさい」
私は駆けて行った。

「大丈夫、子供たちはみんな無事だよ」
「ああ、よかった」

隆寛さんの言葉に脱力した私はその場に座り込んだ。
もし子供たちに何かあったどうしようと、生きた心地がしなかった。

「裏山に残った残雪でかまくらを作って楽しそうにしていたよ」
大人の心配も知らないでって言いたそうな隆寛さん。

「すみません、まさか本当に裏山に入るとは思っていなくて」
「うん、無事でよかった」

こんな時まで穏やかに笑っている隆寛さんの疲れた顔に、心が痛い。

「本当にごめんなさい」
「大丈夫、晴日さんは知らなかったんだから」
「でも・・・」

少し考えればわかることだった。
私にその余裕がなかっただけで、大人として失格だ。

「ほら、そんな顔をしない」
ツン。
隆寛さんが頬をつく。

ドキッ。
たったそれだけのことに驚く自分にびっくり。

「さあ、ご飯にしようか」
「はい」

ずいぶん遅い夕食なってはしまったけれど、私達は台所に向かった。
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