恋をしたのはお坊様
「すみません、お待たせしました」

お母さまからは『片づけなんていいわ』と言ってもらったけれど、居候の身としてはそうもいかず、夕食の片づけを手伝ってから隆寛さんのもとに向かった。

「今日は寒くないからここでいいかなあ?」
「ええ」

庭に面した縁側も上にはつまみとお酒が並んでいる。

「さあどうぞ」
グラスにワインを注いでもらい、私はそれ口にした。

「うん、おいしい」

地元のワイナリーで作っているっていう白ワインは甘めででも後味のすっきりした女性好みの味。

「ねえ晴日さん」
「はい」

呼ばれて顔を上げると真剣な顔の隆寛さんがいて、私の表情も引き締まる。

「ここは田舎で雪も多い土地柄だから、油断すると危険なことも多いんだ」
「はい」
きっと今日のことを言われているのだろうと、素直にうなずく。

「地元の子供たちは普段から裏山に入って遊ぶことも多いから油断しがちだけれど、冬の裏山、それも雪がある時期はとっても危険なんだよ。だから、もし子供達が行くって言えば止めてほしい。用心しすぎに思うかもしれないけれど、過去には遭難して亡くなった人もいるから。晴日さんだって先日怖い思いをしたところだろ?」
「ええ。今日のことは、本当にごめんなさい」

私が止めていれば騒ぎになることもなかったかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱい。
隆寛さんは優しく言ってくれているけれど、大人として配慮にかける行動だった。
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