恋をしたのはお坊様
『ちょっと裏山で休憩をしただけ』と偉そうに言ったけれど、光福寺に帰ってきた私は悪寒に襲われ、その日の夜に熱を出した。
これも全て自業自得と、動けなくなった布団の中でひたすら落ち込んだ。
そんな私にお医者さんの診察を受けさせ、薬を飲ませ、温かくした部屋で大人しく横なるようにと指示した隆寛さんは、三十分おきに様子を見に来てくれる。
さすがにまだ怒っているのかいつものような優しい言葉をかけてはくれないけれど、私の隣に座り額に当てる手のひんやりした体温が心地よくて、私は涙が溢れそうになった。


「晴日ちゃん、着替えを持て来たから一度体を拭きましょうか?」
隆寛さんと入れ替わるように、お母様が着替えとタオルを持って入って来た。

「すみません、ありがとうございます」
「いいのよ。もとはと言えば私が無理なお願いをしたからだもの、ごめんなさいね」
「とんでもありません。今回のことは私が悪いんです」

お花屋さんに行くと言ったのも、入ってはいけないと言われていた裏山に再び入ったのも私。お母様のせいではない。

「嫌いじゃなければ生姜湯を作りましょうか?」
「え?」
生姜湯?

「生姜とくず粉を使った温かくて甘い飲み物なんだけれど、この辺では時々作るのよ。もし生姜が嫌いでなければ作るわ。体がすごく温まるから」
「ありがとうございます」

そう言えば、子供の頃風邪をひくと母も作ってくれた気がする。
懐かしいなあ。
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