恋をしたのはお坊様
通夜までの時間は2時間ほど。
始まってしまえば明日の葬儀まで息つく暇もないため、みんながせわしなく動いている。
もちろん隆寛さんも通夜までに食事を済ませ、僧侶としての身支度もしなければならない。

「食事は部屋でいただきます。彼女のも一緒にいただいて行きますから」

食事のお世話をしてくれるご近所さんに2人分の食事をよそってもらい、お盆に乗せると部屋へと向かう。
もちろん後ろの方から何とも言えない好奇の視線を受けてはいるけれど、隆寛さんは一向に気にしてはいないらしい。

「あの、すごく見られていますが・・・」

田舎の町だもの。噂の広がるスピードだって速いはずだし、明日には時の人かもしれない。
そんなことを思いながら、それでも私はついて行った。

「とにかく食事にしよう」
「はい」

何はともあれ、今は食事。
このタイミングで食べておかないとこの先の予定がたたない。
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