恋をしたのはお坊様
・・・春
4月。
おばあさまの葬儀から1カ月。
町の雪もすっかり消えちょうど桜満開の季節で、景色自体が薄桃色に見える。

「晴日ちゃん、いよいよ今日からね」
「はい」

今日は、私の初出勤の日。
あの葬儀の日、隆寛さんに切望された私はこの街に滞在することに決めた。
もちろんすぐに隆寛さんとどうこうなるつもりは無い。
まずはこの街で働いて、うまくいけば母の実家をリフォームして住もうと思っている。
さすがに何もかも一度にってわけにはいかないから、しばらくは光福寺の離れにお世話になることにした。

「それにしても晴日ちゃんが保育士の資格を持っていてくれて助かったわ。この町でも保育士さんが不足していて困っていたのよ」
「たまたま大学で専攻していただけで・・・」

何の実務経験もなくて保育士ですって名乗るのも恥ずかしいけれど、隆寛さんに紹介してもらって受けた面接ではすごく喜ばれてすぐに就職が決まった。
大学時代就活で苦労した経験を思えば嘘のようで、私もすぐに決めてしまった。
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