恋をしたのはお坊様
それからの時間はとても長かった。
お願いだから見つかってと祈りながら、私は連絡を待った。

あぁー。
なんでいつもうまくいかないんだろう。
私の行動は、してもしなくても裏目に出て非難される。
このところそんな空回りの連続だ。
そもそもの発端は、今から半年前。
同期入社で友人の真壁凛(まかべりん)が会社を辞めたことに始まる。
大学を卒業して1年半。たまたま就職できたのは建設会社大手で、私も凛も営業課の事務として忙しく働き、充実した毎日を送っていた。

そんなある日、
「ちょっとこれ見て」
営業の男性社員が差し出したスマホに映っていたのは凛の半裸写真。

「え、嘘」
ベッドの上で下着姿になりうつろな表情をした凛が直視できなくて、私は目を逸してしまった。

こんな写真を本人が望んで撮るはずはないし、写真の角度から言っても自撮りではない。
この写真は誰かが意図的に写したものだ。

「発信元はわからないけれど、もうかなり拡散されているらしいよ。かわいそうに」

そんな・・・ひどい。

悪いうわさが広がるのは早いもので、半日も経たないうちに凛を見るみんなの視線が変わってしまった。
好奇の目で見られる凛に私も何度か声をかけようと思ったけれど、そのタイミングを見つけられないまま時間だけが過ぎた。それが凛を見た最後。
翌日、凛は会社に辞表を提出し私との連絡も一切絶ってしまった。
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