紫の香りに愛されて ゆきずりのコンサルタントに依頼したのは溺愛案件なんかじゃなかったんですけど
玲哉さんはそんな私の困惑など気にせず、和樹さんと話を続けている。
「あらためて紗弥花さんは自由の身ですから、当初の計画通りご結婚なさって出資してはいかがですか。真宮ホテルも紗弥花さんもあなたの物ですよ」
ちょっと待って。
自由って、私が求めていたのはそんな意味の自由じゃない。
私をこんな男と結婚させるつもりなの?
冷たい汗が噴き出してきて、気持ちが悪い。
玲哉さんの考えていることがまるで分からない。
だけど、信じていいの?
これも何かの演技なの?
和樹さんは肩を震わせながら立ち上がると、吐き捨てるように叫んだ。
「うるさい。今さらこんな女、こっちからゴメンだ。契約は破棄だ」
そっくりお返しします。
私もあなたみたいな人はお断りです。
「こんな女……!」と、和樹さんは私に向かって人差し指を突き出し、何かをわめき散らした。
それは私の知らない言葉だった。
だけど、周囲の人たちはみな引きつったような表情をしていたから、おそらくひどい意味の言葉だったんだろう。
「俺の大事な紗弥花を侮辱するな!」
次の瞬間、玲哉さんが殴りかかろうとするのを宮村さんが必死になって羽交い締めにしていた。
「久利生さん、駄目です」
「そうですよ。こんなクソ野郎と同類になっちゃいますよ」
高梨さんも間に入って両腕を突き出している。
――俺の大事な紗弥花。
今、玲哉さんがそう言ってた。
やっぱり、信じていいんだ。
よかった。
全部、本当だったんだ。
和樹さんの言葉は私には理解できない内容だったけど、玲哉さんが私のために怒ってくれたのがうれしかった。
「帰らせてもらう」
宮村さんに抑えられている玲哉さんを避けながら和樹さんが出口へ向かう。
あわてて母がすがりついた。
「まあ、和樹さん、そんなことおっしゃらずに、もう一度考え直してくださいな」
「断る。もう二度と関わりたくない」
「そんな」と、母が絶句した。「それでは真宮ホテルはどうなるのですか」
「知るか。こんなホテル潰れてしまえばいいんだ」
「和樹さん、お待ちになって」
母の懇願も虚しく、卑劣な男は逃げていった。
「あらためて紗弥花さんは自由の身ですから、当初の計画通りご結婚なさって出資してはいかがですか。真宮ホテルも紗弥花さんもあなたの物ですよ」
ちょっと待って。
自由って、私が求めていたのはそんな意味の自由じゃない。
私をこんな男と結婚させるつもりなの?
冷たい汗が噴き出してきて、気持ちが悪い。
玲哉さんの考えていることがまるで分からない。
だけど、信じていいの?
これも何かの演技なの?
和樹さんは肩を震わせながら立ち上がると、吐き捨てるように叫んだ。
「うるさい。今さらこんな女、こっちからゴメンだ。契約は破棄だ」
そっくりお返しします。
私もあなたみたいな人はお断りです。
「こんな女……!」と、和樹さんは私に向かって人差し指を突き出し、何かをわめき散らした。
それは私の知らない言葉だった。
だけど、周囲の人たちはみな引きつったような表情をしていたから、おそらくひどい意味の言葉だったんだろう。
「俺の大事な紗弥花を侮辱するな!」
次の瞬間、玲哉さんが殴りかかろうとするのを宮村さんが必死になって羽交い締めにしていた。
「久利生さん、駄目です」
「そうですよ。こんなクソ野郎と同類になっちゃいますよ」
高梨さんも間に入って両腕を突き出している。
――俺の大事な紗弥花。
今、玲哉さんがそう言ってた。
やっぱり、信じていいんだ。
よかった。
全部、本当だったんだ。
和樹さんの言葉は私には理解できない内容だったけど、玲哉さんが私のために怒ってくれたのがうれしかった。
「帰らせてもらう」
宮村さんに抑えられている玲哉さんを避けながら和樹さんが出口へ向かう。
あわてて母がすがりついた。
「まあ、和樹さん、そんなことおっしゃらずに、もう一度考え直してくださいな」
「断る。もう二度と関わりたくない」
「そんな」と、母が絶句した。「それでは真宮ホテルはどうなるのですか」
「知るか。こんなホテル潰れてしまえばいいんだ」
「和樹さん、お待ちになって」
母の懇願も虚しく、卑劣な男は逃げていった。