世界の数よりも君と一緒にいたい
猛烈に嫌な予感しかしない。

どうしようか、僕は進むべき道を間違えたのかもしれない。

「でさ、青年よ。電車どこにあるんだろうね」

「さっき塾帰りで乗った電車が近くにあるはずなんだけど……」

「いやいや、この短時間で相当な距離移動してたりするんじゃないの?」

「電車乗るんだったら頑張ってよ」

「へいへい」

「なんか弱み握られた気分」と呟いてから駅に向かって歩き出した。

「遠かったら歩かなきゃかもね」

「疲れたくない……」

いやいや、何を馬鹿なことを。人生疲れなくちゃ人生とは言わないでしょ。それを口にすると「はい、心晴くんの名言」とノリよく笑い飛ばしてくれた。

「というか、疲れたくない、じゃなくて歩きたくない、でしょ」

「へぇ、よく分かってらっしゃる」

僕も言いたいことがポンポン言えるようになってきた。この短時間でここまで彼女に心を開くとは思ってもみなかった。数分前までは赤の他人だったくせに、こんな偶然もあるんだな。

なんて僕はちょっとかっこいいことを頭に巡らせてから千世に目を向けた。
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