世界の数よりも君と一緒にいたい
「って、ああ!」

突然大声を出して叫び指さす先にあったのは中途半端に止まった電車。

「電車あった〜」

まるで久しぶりに本を手にしてその感触を楽しむかのように、電車に抱きついてほおを擦り寄せた。……本当にこんなのが高校生? と目を疑うほどだ。

そして電車はというと、ちょっと古く傷んでいて、アクセントとなる緑の線が剥げていた。ついさっき――創作世界に来る前――も全く同じ電車に乗っていたはずなのに。ちょっと灰色がかっているのは作りものの世界だからだろう。

「……あっ、これどうやって中入るの?」

「あ〜、確かに」

いや、確かにじゃないから、確かにじゃ。

当のドアはガッチリと閉まっている。

「そうだ、あたしたちは犯罪者! ならば電車のひとつやふたつ、壊したってなんにもないわ」

猛烈に興奮したような千世と、肩を落として震える僕。この空気の温度差は一体何?

それに簡単にドアを壊せるはずないじゃないか……。

「アニメとかでよくあるじゃん。ガラスバリーンって割って侵入するみたいな。ちょうど夕方だからさ、空の色もいい感じだし? マッチすると思うんだよねー、幻想的なのが目に映るかも」

僕は馬鹿である。そして、千世は思考が子供すぎである。
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