世界の数よりも君と一緒にいたい
「よし、行くよ?」

千世は手に拳を作って弓を引くようにしたあと、電車のガラス窓にぶち当てた。

――バーン、バリーン……。

風が吹いて髪を揺らした。

ガラスが跳ねて舞い散る。

スローモーションでもかかってるような気分で、落ちていくガラスを目で追いかけた。

土の地面にシャラシャラと落ち、窓は盛大に割れている。

夕陽に照らされたガラスの破片がキラキラと輝いていた。

割れた窓を見てみると、振動でかところどころにヒビが入っている。

こりゃやってんなぁ……。

ガラス窓も、こんなヤワだったのか……。

いや違う、ガラス窓はヤワなんかじゃない。千世が馬鹿力すぎただけ。……だと願おう。

ガラス窓が可哀想だ。

と、初めて窓をいたわった。
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