世界の数よりも君と一緒にいたい
嫌な予感しかしない。

本当に僕はこの電車から降りられるのだろうか……。

僕の死に方は電車の中であおり運転すぎて頭を強打、とかそんなダサいのにはならないよね? 僕毎回ダサかったし男らしくなかったから最後くらいせめてね、それくらいお願いします。

「よーし、行くぞっ」

電車がガチャンと音を立て、最初はゆっくりと、徐々にスピードを増して進んでいく。

途中まではそれっぽく運転できてた。だけどそんな上手くいくことはなく、カーブに来たところでぐわんと大きく揺れ、頭を強打した。

ゴンッと音を立ててからゴロゴロと転がって、椅子の下で止まった。

「わーお、ごめんごめん」

「ごめんごめんじゃないよ。本当に意識飛びそうだったんだから」

痛ってぇ……と頭をさすってみせると、千世はもうどうでもいいらしく死んだゴキブリを見る目を向けてきた。

「別に心晴くんじゃん。心晴くんってあんまり役に立たないし、さ……」

「えっ、千世はそんなふうに僕を見てたの?」

「え? ちょっと何言ってるの? そんなわけないじゃーん」

いや、これはそんなわけある時の顔だ。

「ほら、早く電車進めて」

僕は千世を運転席に押し込み、今度は転がらないように椅子に座って手すりを握る。

これなら転がることはない、と思っていたし、転がらない予定だったのだ。

なのに僕の運動神経のせいなのか、やっぱりカーブが来たり急ブレーキがかかったりすると椅子から転げ落ちるのだった。
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