君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
学校につくと私はなぜか息切れをしていて朝からすでに疲れている。

原因はどう考えても桐生くんだ。私の歩幅に合わせてくれることもなくどんどん歩いていく桐生くんを見ると本当に暖とは真反対だということを実感する。

ついていくだけで精一杯の私は学校に着いた時にはヘトヘトだった。

「は、早すぎない…歩くの」
「?普通だろ」
怪訝そうに平気な顔をして返してくる桐生くんに少しいらっとくるのを抑える。

元々は呼び止めた私が悪いのだ。
ふぅと一度深呼吸をして自分を落ち着かせる。

桐生くんが教室で話を始めようとするので必死に止めて空き教室に向かうことにした。

「それで?聞きたいことってなに」

先程よりも不機嫌度がアップしているのが分かる。

でも仕方ないじゃないか。だって桐生くんのような容姿端麗の人がいたらきっと女子の視線が痛くて話どころではなくなってしまう。

何も分かっていないような彼の表情を見ているとこの人は鏡を見たことがないのかと疑ってしまいそうだ。

「ねえって」
何も言い出さない私に痺れを切らしたのか怪訝そうに眉をひそめている彼の顔がぐんと近くなる。

「わ!!ご、ごめんって」
急に端正な顔が近付いてきて反射的に驚いてしまう。

「えっと…その、暖と仲良いんだよね?色々聞いちゃって」

あはは、と無理やり笑う私に対して彼は「あいつまたペラペラと…」と舌打ちをしている。

「はあ…そうだよ仲良いけど、それがどうしの?」

「暖のことについて…教えてほしいの」
彼の顔を見てみると、ドン引きしているかのような目をしているのが分かる。

「っちが、違うからね?!」
とんでもない勘違いをされている気がする。
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