君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
「でもよかった、笑った顔が見れて」

「…?どういうこと?」

「だって僕は君の泣いた顔しか見てなかったから、あんな場所で一人でいたら誰だって心配するよ」

そんなことを考えてくれていたなんて、じんわりと心が暖かくなるのを感じる。

私が泣いた理由は聞いてこないのか。

普通はそこを知りたいと思う人が多いのに無理に聞いてこないところが彼らしい。

そしてそんなところがありがたく思った。

「冷」という普通の人として私を見てくれている彼には同情という目は向けられたくないから。

「…ありがとう。暖」

もうそろそろクラスメイトも登校し始める頃だろう。

私と一緒にいるところを見られたら彼まで何か
言われるかもしれない。

それにチカはこんなイケメンを見たらぐいぐいアタックしにいくだろうなぁと容易に想像がつく。

別に私にはチカや暖の色恋沙汰なんて関係ないのだけれどそれでも彼のことを周りに知られるのは少し嫌だった。

私が色々なことを考えている最中も暖はにこにこしているし私が見上げると「ん?」と首をかしげて何も考えていなさそうだ。

こんな純粋そうな人が好奇の目に晒されるのは困る。

それにこんな綺麗な髪色と瞳をしているのだ。

街中で歩いているだけでも目立ちそうだが。

そんなことを考えているうちにぞろぞろクラスメイト達が登校してくるのが教室の窓から見え始めた。

「私、ちょっとお手洗いいってくるね」
「うん。じゃあれいまた後でね」

私はすぐにトイレに向かった。
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