君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
「透和とは僕が病院に入院してる時に出会ったんだ」
意外な言葉に驚く。桐生くんは病院にはいっていたのだろうか。

「中学で、いじめられてた男の子のことほっとけなくていじめてた人のこと煽ったら刺されたとか言ってたよ…」

「さ、刺されたの?!」

はは…と暖は苦笑いを浮かべている。
でもその反面「ほんとかっこいいよ」と口角をあげて暖かな表情も浮かべていた。

桐生くんは佳奈のことで後悔していたと思う。
だから中学では自分に嘘をつかないようにそんなことをしたのかな…と勝手に想像する。

何だかんだ言いながらも暖を探すことにも手伝ってくれて、刺々しい口調の時もあるけれど優しい人だ。

「病院で、僕が周りに見た目のことで色々影で言われてたんだ。そしたら、透和が僕のこと何も知らないのにその人たちに文句言いにいくんだよ?」

「あの時はびっくりしたよ」と思い出すかのように口からは笑みがこぼれていた。

その表情を見ると、きっと暖もそして桐生くんもお互いのことを大切に思っていることがわかる。

そう思うと…切なくなった。桐生くんがこっちに転校してきた理由、それは多分暖が病気をもっているから。

大切な友達と、最悪の事態になればもう一生会えなくなるかもしれないんだ。

その事実を思い出して私はまた気持ちが沈む。

でも今は、今だけはどうしてもこの時間を大切にしたかった。

何も考えずに純粋に暖と一緒に他愛もない話をして、いつものように過ごしたいと思った。
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