君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
* Rei

暖と電話をしたその日から一週間が経っていた。
私たちは思っていたよりもごく普通の日常を過ごしている。

「おはよ、冷」

まるでこの前の話が嘘かのように平然と振る舞う暖に少しだけ戸惑いを覚えるが「おはよう」と返す。

暖の方が辛いはずなのに私がこんな気持ちでいてどうするんだと心を強く保つ。

それでも私は感情を隠せていないのか、チカに「大丈夫?」と心配そうな目で見つめられることが最近多い。

「ありがと、大丈夫だよ」
心配をかけさせないようにそう言うとチカが何も言わずにこちらをじっと見てくる。

何事かと思い子首をかしげていると思わぬ返事が返ってきた。

「…後悔することはしちゃ駄目だよ」

まるで私の心を見透かすように微笑んで話すチカにドキッとしてしまう。

私があの日慌てふためいていた時、チカは暖のことを察しているのかもしれないと薄々思ってはいたけれど。

"後悔"という言葉が私の頭を悩ませる。

どうしたら私は後悔せずに暖との時間を過ごせるだろうか。それとも、後悔しないなんてもう無理なことなのだろうか。

暖は私と一緒にいるだけで大丈夫だと言ってくれた。
でも、この日々が続いていっていつのまにかもう一年経ちましたなんて言われても私は受け入れられない。

それなら私がするべき事はなにか。
いや…違う、そんな義務的な考え方じゃないのかもしれない。

私は暖と一緒にしたいこと、話したいことがまだまだたくさんある。
それなら難しく考えずに心のままに動けばいいじゃないか。

チカの言葉にやっと私は正気を取り戻せた気がした。

「____私、後悔しないように頑張るよ」

そう言う私にチカは柔らかい笑みを返してくれた。
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