君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい

「後で」という彼の言葉が少し引っかかるがまぁいいだろう。深い意味はないはず。

さすがに教室に1人残ったりはしないだろうしこれで暖がクラスの人と会うこともないだろう。

それにしても結局どこの人だったのだろう。

理数科は校舎が分かれているためもしかしたらそっちの人なのかもしれない。

校舎が違えば会うこともほぼないだろうし。
結局彼の正体は分からないままだったけれど

根掘り葉掘り探るようなことはしたくないと思い
考えすぎるのはやめておいた。

私だって名前のことくらいしか話していないんだし。

「また会えたらいいなぁ……」と呟く自分の口角が少し上がっているのが分かる。

チャイムの音が聞こえる。

「やば、そろそろ教室もどらないと」
私は駆け足で教室に戻り自分の席に座った。

周りも席に着き始めるがまだ会話が盛り上がっているのかいつもより騒がしい気がする。

「ねぇねぇ、聞いた？」「なんか…転校…らしいよ」

ん？周りがざわざわしてててあまり聞こえないが"転校"という言葉が聞こえたような気がする。

誰か転校するのかな？

もしかしてそれで皆ザワついてるのだろうか。

私は友達がいる訳でもないので情報は
共有されてこない。

まぁ仕方ないかと少しため息をつく。

ガラッとドアが開く音が聞こえる。

先生がきたのだろう。

「おーい皆静かにしろー」と気だるそうな声と共に皆の声も少しづつなくなっていく。