君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
____昔のことを思い出す。
前まではよくチカの家に遊びに行っていた。

チカの家は楽しくて、お父さんもお母さんも優しい人たちだった。


緊張して少し無愛想な私にも優しくて、
「ゆっくりしていってね」と優しい声をかけてくれる。

それにチカの家にはお姉さんもいた。

チカは意地悪してくるから姉なんか嫌いだと言っていたけど仲はよかったんだと思う。

なんだかんだ言いながらもチカはお姉さんの誕生日プレゼントを真剣に考えていたし、

私に「これでいいかな…」と相談してきたこともあった。

きっと嫌なところもありながら好きという気持ちもたくさんもっていたんだと思う。

___チカは素直じゃないから。

そんな思い出に浸っているとガチャと玄関の扉が開く音が聞こえる。

お父さんが帰ってきたのだろう。
「おかえりー、お父さん」

「ただいま冷。お、いい匂いがするな今日はカレーか?」

「大正解!」と笑う私にお父さんはありがとうなと疲れているはずなのにそんな素振りも見せずに頭を撫でて微笑んでくれる。

お父さんの顔を見ると思う。

自分は十分幸せな方だろうと、この世の中さっきのドラマのような報われない人たちがたくさんいる。

皆が幸せになる世界ならよかったのに。

そんな叶わない想いをもちながらお父さんと一緒にカレーを食べていた。

今日は暖が転校生だったり湊と久々に会ったりと色々なことが起こったな。

少し疲れを感じ私はカレーを早めに食べ終え、
いつもより早く部屋に戻った。


ベッドに吸い込まれるように寝転ぶと徐々に視界が暗くなっていき私はいつのまにか深い眠りについていた。
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