君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
「たしかにそう考えたら朝の準備も億劫じゃないよね」と返し暖はいつもそんなことを考えているのかと心の中で思う。

ということは暖が会いたい人、というのはもしかして学校の人?

いやいや、でも昨日転校してきたばかりなのだからこの学校かなんて分からないだろう。

もしかすると芸能人だとか空想の話をしていて、もし会うとしたら!とやる気の問題を話しているだけかもしれない。

それはそれでどうなんだと思うけれど。

色々と考えて嫌な思考が頭をよぎりそうだったので深追いして考えることはやめることにした。


そんな考え事をしているうちに暖がこちらをチラチラ見ていることに気付く。
「どうかした?」

彼は口を少開けては閉じたりしている。言いにくいことでもあるのだろうか?私は彼が話しだすまで待つことにした。

彼が口を開く。

「今日さ、もし良かったら一緒に帰らない?」と少しはにかみながら聞いてきた。

そんなことだったのか、と少し驚く。
こんな私と帰りたいと言ってもらえるなんて素直に嬉しかった。

なぜ言い出しにくそうにしていたのだろうと疑問に思うが「私でよかったら全然いいよ」と答えた。

彼はパーッと目を輝かせ「じゃあ約束ね」と返してくれる。
私なんかと帰るのにそんなに喜ぶなんて。

自分の顔が少し赤くなっているのを感じる。

彼の耳も少し赤くなっているように見えたが窓から差し込む光のせいか、気のせいだろう。

何も意識せず返してしまったが今更、一緒に帰ると誘ってくれたということは二人で帰るということだと意識する。

別に彼にそんなつもりはないのに自分の心臓の音がうるさい。

その時チカの存在を思い出した。

私とチカは一緒に帰っていたのだからもちろんチカも帰りの方向は同じなのだ。

それならもしかするとチカが暖を誘ったりするかもしれない。





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