君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
2人で夕飯を食べるこの時間が好きだ。
お父さんが作るご飯は、優しい味がする。

でも、こんな時でさえ私は学校での出来事を思いだしては食べている手が止まってしまう。

そういえば私の名前はなんで冷になったんだろう。
お母さんがたった一つ唯一残してくれた名前なのに、私はお母さんを恨みそうになる。

この名前じゃなかったら私はこんなになって
なかったのかな。
そんなことを思うけど、でもきっと名前が違っても変わらない。

私みたいなひねくれ者は変われない。

「ねぇ、お父さん」
「ん?」
「私の名前ってさお母さんがつけたんだよね、なんでこの名前つけたんだろう」とやんわりと聞いてみる。

お父さんの前で自分の名前が嫌いだなんて口が
裂けても言えない。

「うーん…名前の由来か、そういえば知らないな。でも母さんは優しい人だからな、きっといい意味があって"冷"って名前をつけたんだと思うぞ」と優しく返される。

お父さんのその切ないような優しい笑顔を見ると、きっと私がこの名前を嫌いなことに気付いているのかもしれない。

「…そうだよね。お母さん優しいもんね!どんな由来なのか知りたいなー」と空元気に私は返した。

口にだしてはいけない。お父さんにも、今ここにはいないお母さんにも悲しい思いはさせたくないから。

その日の夜はなかなか寝つけなかった。
ベッドに入っても明日の学校の不安に駆られ、それに今日休んでいた暖のことも心配だ。
それに___チカのことも。

チカには散々嫌なことを言われてきた。
それでも私はまだチカのことを嫌いになんてなれない。
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