君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
私にできることは暖に迷惑をかけないよう近寄らないようにすることだけだ。

そのことを心に留め、私は自分の席に座った。
佳奈の視線をグサグサと感じながらも知らないフリをしながら。


1時間目、2時間目…と着実に授業が進んでいた中、次の時間は体育の授業だった。

体育は苦手だ。別に運動が苦手な訳ではない。
ただ、2人組やらグループ分けなどが体育の時間は多い。

高校にはいってからも友達ができていない私はいつも余ってしまうのだ。

余るぶんにはまだいいが、その後先生がどっかのグループにいれてやれなどと言うものだからどこかのグループがしぶしぶいれてくれる。

いつもそのせいで申し訳なくなり、きっと相手も気まづいだろうなと思ってしまう。

「うーん、サボろうかな…」
一人静かな教室に残された私の小さく弱々しい声はよく響いた。

そんな時ガラッとドアが開く音が聞こえる。
驚いてその方向に目を向けるとそこには見たことのない男子が立っていた。

スっと通っている鼻筋に真っ黒な整えられている髪、そしてかけている細ぶちの眼鏡から見える目元は切れ長でシュッとしていた。

パッと見た瞬間に、なんだか彼は暖とは真逆のような人だなと思ってしまう。

けれどよく見ると端正な顔立ちをしていて暖とはまた違う綺麗さをもっている。

彼は眉をひそめて誰なんだこいつはというような怪訝な目で私をジロリと見つめてくる。

何を言えばいいのか分からず「えっと…」と話をしようとするが、口を噤んだままの彼を見ると無言の圧のようなものを感じてしまい何も言えなくなってしまった。

謎の無言の時間が続いてしまう。

そんな時彼が沈黙を破った。
「……あんた暖って人、知らない?」

突然暖の名前がでてきて驚く。

初対面にも関わらずあんただなんて無愛想で
そっけない印象だなと思ってしまった。
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