君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
間違いない。あの目立つ髪色は暖だ。
隣には誰かが歩いていて一緒に話をしているのが見える。

…女の人だ。髪は長く、暖と少し似ている色素の薄い髪色をしていた。
暖よりは暗めの色ではあるけれど。

もしかして、彼女?

でもわざわざ学校を休んで彼女と学校にくるなんておかしすぎる。

そんなことを考えてモヤモヤと頭を悩ませていると2人はまた別の誰かと話し始めた。

あれはうちの担任、涼香先生か。

そうか、これは多分私の憶測だがあの人はきっと暖のお母さんだ。事情はよく分からないけれど、きっとお母さんと暖で学校にきているのだ。

それなら担任と話しているのも合点がいく。

そう思うとなぜかほっとする自分がいる。
暖に彼女がいようと私には関係のないことなのになぜこんな気持ちになっているんだ。

もう一度暖の方に目を移してみるとそこには先程の男の子、桐生くんが立っていた。

驚いた、まさかこんなにすぐに見ることになるとは。

暖のお母さんらしき人に会釈をしたあと、桐生くんは親しげに暖と話しているのが分かる。

暖は楽しそうに笑っているのに、そんな暖に桐生くんは少し叱るように口を尖らせて話している。

一体どんな話をすればあんな風になるんだと思い会話は聞こえないが私はついふふっ、と笑ってしまった。

桐生くんと暖はどんな話をしているのだろうか。

二人が話している光景が想像できなかった私はこの光景がすごく珍しいもののように見えた。

もう少しだけ見ていたいなと思う願いは叶わず、そろそろ次の授業までの時間がせまっていた。

気になることは色々あるがとにかく今は教室に戻ろうと思い、私は屋上をあとにした。
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