君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
そんな時に扉が開いた。
私は目を見開いてしまう。チカ、だ。

「…佳奈、なんかあったの?」と戸惑い気味に
聞くチカがいる。

さっきの私の怒鳴り声が聞こえていたのかもしれない。そう思うと途端に恥ずかしくなる。

「チカ!心配したじゃーん体調平気なの?」

と先程とは打って変わって猫撫で声に変わる佳奈に嫌気がさす。

「大丈夫だよー、もう大袈裟なんだから。それで?なんかあったの?」

チカが一瞬私の方を向いた気がした。
けれど私は合わす顔がなく、すぐに窓の方を向いてしまった。

「それがさー聞いてよチカ、冷のやつやばすぎ。
チカがいない間に暖くんと話してたんだよ、よっ男好きって感じー!」

「………へー、やば、男好きすぎじゃん」と長い沈黙のあとに言葉を返すチカの声が聞こえた。

その言葉に胸が締め付けられるような気分になる。分かってはいたことだけれど。

窓の方をずっと見ている私からはチカの表情は見えない。

チカは今、どんな表情をしているのだろうか。

佳奈と一緒に私を笑っているのか、それともまた…いつもと同じような表情を浮かべているのかな。
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