君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
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「…佳奈にそんなことがあったんだ」

チカの話は、私が初めて聞くことばかりだった。
チカがどれだけ悩んでいたのか、彼女の苦しみを何も分かってあげられていなかった。

「今更許してほしいとは言わない。でも、冷…本当にごめんなさい。私たちは今まで冷にひどいことしてきた」

「私、されたことは許すつもりないよ。
でも、私がしたことも許さなくていい」

「え…?」
チカが困惑したような顔をする。

私はそんなのお構いなしに続けた。
「お互いおあいこだよ、私たちは不器用だっただけでしょ、だからもういいじゃん」

良いことなのか、適当なのか、どちらか分からないことを言っている私に思わずチカが吹き出した。

「…っふ、ははっなにそれ…」
チカは涙を流している、それでもその顔は私が見てきた中で一番、嬉しそうな笑顔をしていた。

「冷は…変わらないね。ずっと優しくて素直な子だ、湊が好きになるのも、今更納得しちゃうよ」

と泣きじゃくりながら話す彼女に何を返したらいいのか分からなくて。

私なんかよりもよっぽどチカは優しくて、素直な子
じゃないか、と言いたくなるけれど言葉を抑える。

湊の話をだされたら私が嫌味を言っている人のようになってしまいそうだ。

でも…本当だよ。

私は本当に、チカが誰よりも優しくて素直で素敵な子だって思ってるのは今も昔もずっと変わらない。

「チカ、仲直り…!」

「ふふ…遅すぎるよ、長い喧嘩だね」

二人で笑い合う私たちは、前よりも、本音を言い合える仲になれた気がした。
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