君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
「変わった?そうかな」とどこが変わったんだと頭にはてなを浮かべていると、

「変わったよ!前よりもっと優しくなったね、暖くんのおかげかなぁ」と茶化すように言うチカにこらと頭を軽くこつく。

おー!やってくれたなーと私にやり返そうとするチカから逃げるように私は走る。

二人で笑い合いながら走っているこの時が、もう一生
こないと思っていた。

もうチカと桜の景色は見られないと思っていた。

けれど違った。
暖があの日、私が涙を流していた時に大丈夫と声をかけてくれたあの時があったからこそ私は変われた。

私はその日、久々に心から笑えた気がした。

チカと「また明日ね!」とお別れをして、家につくと私は上機嫌に夕飯の準備を始めた。

お父さんが帰ってくると、驚いた表情をしていた。
「チカただいま、おー今日はご馳走様だなぁ!」
と喜んでくれているのが分かる。

今日は家にあったものでサラダとオムライス、そしてデザートも作ってみた。

いつもは学校で疲れきっていてそこまで手がまわらなかったけれど、お父さんのためにと頑張ったのだ。

「…冷、なんだか楽しそうだな」と言うお父さんは、私の変化にすぐ気付いてしまうなと思う。

私は「うん、楽しいよ」と今日は嘘をつかずに本当の気持ちをお父さんに伝えることができた。

前までは、学校が嫌でもお父さんに心配はかけないようにと嘘をつき続けていたけれどこれからは違う。

お父さんはもしかすると、私が学校が嫌なことに気付いていたのかもしれない。
私の嘘なんてバレバレでも、言わないでいてくれたのはきっとお父さんの優しさだ。

「「いただきます」」
私は、お父さんと一緒にオムライスの味を噛み締めて幸せだなと心の中で呟いた。
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