君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
せかせかと制服をハンガーにかけ私はすぐにベッドにはいった。

さっきの人、見たこともない人だった。
ここら辺に住んでいる人だろうか?

すごく、優しい瞳をしていたなと
改めて思い出す。

色素が薄いからなのだろうか、陽の光に照らされてキラキラと輝いているように見えた。

きっと見ず知らずの人間に大丈夫?なんて声をかけられるのだから優しい人には間違いないだろう。

そんな人もこの世の中にいるのかと思うと少し心が暖かくなる。

学校という狭い世界の中で人を見ているといつのまにか視野が狭くなっているものなんだなと思う。

いつかまた会えたらいいな、そうしたらお礼をしっかり言って謝ろう。


「もうそろそろご飯できるよー」

お父さんの声が聞こえる。

はーいと気の抜ける返事をしゆっくりと下の階に行くと温かいハンバーグとご飯が置かれていた。

「わぁ美味しそうありがとお父さん」

早く帰る時はいつも私がご飯を作っているが今日は遅かったので久しぶりにお父さんのご飯だ。

私の家は父子家庭でお父さんが1人で私を
育ててきてくれた。

お母さんは私を産んでから病気をもってすぐに亡くなってしまったのだ。

たまに寂しさを感じることもあるけど私はお父さんがいるだけで十分幸せだ。

だからこそ、学校のことは絶対に言わない。

これ以上負担をかけさせる訳にはいかないもの。
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