君にありがとう【咲】



「榎くんと、なんかあったの?」



 詩の短い髪先が揺れる。

 なんでこう痛いところを突いてくるのかな。



「それ、図星ってことだね」



 エスパーか!

 そう心の中でツッコミを入れつつも、私は話すことにした。

 単純に、このことを誰かに話したかった。

 話して、肩の荷を軽くしたかったのかもしれない。



「相馬にさ、今年チョコレートあげてないの。親が受験のことでうるさくて……」



 私の話に、詩は黙って聞いてくれた。

 そのおかげで、私はスラスラと言葉が溢れてきた。


< 9 / 18 >

この作品をシェア

pagetop