君にありがとう【咲】
「榎くんと、なんかあったの?」
詩の短い髪先が揺れる。
なんでこう痛いところを突いてくるのかな。
「それ、図星ってことだね」
エスパーか!
そう心の中でツッコミを入れつつも、私は話すことにした。
単純に、このことを誰かに話したかった。
話して、肩の荷を軽くしたかったのかもしれない。
「相馬にさ、今年チョコレートあげてないの。親が受験のことでうるさくて……」
私の話に、詩は黙って聞いてくれた。
そのおかげで、私はスラスラと言葉が溢れてきた。