サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
*
「バイタルは?」
午前中に部長からメールが来ていた患者の容体が急変し、緊急オペとなった。
こんな時に限って、肝心の部長は慰労会に出席したらしく、飲酒して執刀出来ないと連絡があったらしい。
夜勤だった葛城先輩は明日も夜勤の勤務予定なっていて。さすがに三日連続は可哀そうだと思った研修医が、私へと連絡を寄こして来た。
仕方ない。
現在講習期間中という事もあって、二人の医師が不在なため、必然的に人員が足りない状態。
若手外科医と私の二人で無理なら、他の外科医に応援依頼しなければならないのだから。
*
調理途中で放り出す形で自宅を後にした彩葉は、夕食も摂らずに再び職場の呼び出しに応じたのだ。
恋人へメモを書き残し、念の為にメールも送っておいて。
当直の若手外科医 小川 雄一(二十八歳)とオペナースの新藤 千歳(三十三歳)、広瀬 ゆり(三十歳)と麻酔科医の長谷 邦和(四十六歳)と術前カンファレンスを行う。
その情報の共有を念のために部長に報告して……。
「心エコーとABGA(動脈血液ガス分析)の結果は出てる?」
「あっ、はい!心エコーがこれで、ABGAはPaO₂(動脈血酸素分圧)が六十まで低下してます」
容体が悪化した患者を待たせるわけにもいかない。
彩葉が到着するまでの間に心エコーとABGAの検査を指示していた。
ABGAは、血液中に含まれる酸素や窒素、二酸化炭素などのガスが溶け込み、pHやHCO₃(重炭酸イオン化学式)等の状態を測定し、心臓や肺、腎臓等の臓器と体液の状態を調べることが出来る。
要するに、血液の状態を調べることで臓器の状態(損傷具合)を見極めるのだ。