サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
ハザードランプを点灯させて、車から降りる。
ドアに凭れかかって、通用口のドアの先に視線を固定して―――。
「郁さんっ!」
マキシ丈のスカートを揺らしながら、片手を上げて彼女が駆けて来た。
「お疲れっんッ……」
「……逢いたかったですっ」
飛びつくように抱きつく彩葉。
まともな笑顔を見たのは何日ぶりだろうか。
抱き締め返しながら彼女のぬくもりを肌で感じて。
「何か食べたか?」
「いえ……」
「じゃあ、食べて帰るか?それとも、帰って食べるか?」
彼女が作ってくれたものがある。
まだ途中だと思われるものもあるから、帰宅してその続きをするんじゃないかと、ほんの少し気がかりでもある。
「食事より……郁さんとお話したいですっ」
「フッ、……会話にならなくてもいいのか?」
「ッ?!……べ、別にっ……構わないですよっ……郁さんがいてくれればッ」
「じゃあ、帰るか」
「はいっ」
助手席のドアを開けて、彼女をエスコートする。
車外からシートベルトを留めようと腕を伸ばした、その時。
頬に触れるだけのキスの贈り物が。
カチッと装着し、顔を右に振り向かせて……。
シートに手をついて、彼女の唇に唇を重ねる。
深夜二時半過ぎ。
通用口の外灯が、彼女を美麗に照らす中で。
*
自宅に到着し、玄関からリビングへと進む彼女の後ろ姿を見つめ、抱き締めたい衝動をぐっと堪える。
仕事で疲労困憊の彼女の足取りが、思ってた以上に重たそうで。
今抱き締めてキスしたら、彼女の体が悲鳴を上げそうだ。
今でさえ、よれよれで疲労の極致だと思うから。