サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)



深夜三時前に郁さんが職場まで迎えに来てくれた。

久しぶりにまともに見た彼は相変わらずカッコよくて。
腕組をして車に凭れかかる彼に思わず抱きついてしまった。

鍛えられ程よくついた筋肉質の体。
毎朝六時に起きて、ジョギングをしているらしい。

そんな逞しい体に抱き締められると、脳内が軽く暴走してしまう。
久しく彼に抱かれていない。

お互いの仕事が多忙過ぎて、完全にタイミングが合わな過ぎて。

別に体が目当てなんじゃない。
何事にも厳しく、弱音も吐かずに努力し続けるその芯のある彼に惹かれたのだから。

だけど、三十二歳という年齢が、要らぬ感情を急き立てる。
今すぐにでも『愛されたい』という欲望に。


彼が職場に迎えに来てくれたのは覚えているけれど。
精神的にも肉体的にも限界点を超えてしまったのか、それ以降の記憶が断片的で…。
気付くと、下着姿で彼の前に立っていた。



「何か、食べれそうか?」
「……フルーツくらいなら」

お腹は減ってる。
だけど、疲れ過ぎて食べる気力が無い。

帰宅しシャワーを浴びた私は、桃をカットする彼の横に突っ伏す形で体を預ける。
調理台のひんやりとする冷たさが気持ちいい。

目を瞑っていると、流水の音が耳に届く。
本当なら私が彼のために桃をカットしてあげたいのに。
今はそれすら出来そうにない。

「彩葉?」
「へ?」

彼に呼ばれたと思ったら、体が宙に浮いた。
彼が運んでくれているようだ。
ゆらゆらと心地いい浮遊感を味わう。

再び重力を感じた時はリビングのソファーに下ろされていた。

「ちょっと待ってろ」

遠のいてゆく彼の後ろ姿を眺めていると、再び私の元へと戻って来た。
お皿に盛られた桃を手にして。

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