サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
*
深夜三時前に郁さんが職場まで迎えに来てくれた。
久しぶりにまともに見た彼は相変わらずカッコよくて。
腕組をして車に凭れかかる彼に思わず抱きついてしまった。
鍛えられ程よくついた筋肉質の体。
毎朝六時に起きて、ジョギングをしているらしい。
そんな逞しい体に抱き締められると、脳内が軽く暴走してしまう。
久しく彼に抱かれていない。
お互いの仕事が多忙過ぎて、完全にタイミングが合わな過ぎて。
別に体が目当てなんじゃない。
何事にも厳しく、弱音も吐かずに努力し続けるその芯のある彼に惹かれたのだから。
だけど、三十二歳という年齢が、要らぬ感情を急き立てる。
今すぐにでも『愛されたい』という欲望に。
彼が職場に迎えに来てくれたのは覚えているけれど。
精神的にも肉体的にも限界点を超えてしまったのか、それ以降の記憶が断片的で…。
気付くと、下着姿で彼の前に立っていた。
*
「何か、食べれそうか?」
「……フルーツくらいなら」
お腹は減ってる。
だけど、疲れ過ぎて食べる気力が無い。
帰宅しシャワーを浴びた私は、桃をカットする彼の横に突っ伏す形で体を預ける。
調理台のひんやりとする冷たさが気持ちいい。
目を瞑っていると、流水の音が耳に届く。
本当なら私が彼のために桃をカットしてあげたいのに。
今はそれすら出来そうにない。
「彩葉?」
「へ?」
彼に呼ばれたと思ったら、体が宙に浮いた。
彼が運んでくれているようだ。
ゆらゆらと心地いい浮遊感を味わう。
再び重力を感じた時はリビングのソファーに下ろされていた。
「ちょっと待ってろ」
遠のいてゆく彼の後ろ姿を眺めていると、再び私の元へと戻って来た。
お皿に盛られた桃を手にして。