サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
3 思わぬ敵が出現しても対応は至ってクールに
長崎空港に到着した機体は羽田空港へと戻るために給油、荷物の積み込み、点検や清掃業務が行われ、再び出発のための準備が完了した。
羽田・長崎間の往復を担当する機長の財前と副操縦士の奥菜正孝(二十七歳)は、操縦室内にて出発前のチェックリスト(副操縦士が読み上げ、機長がスイッチの位置や計器の状態に見落としがないか再確認する行為)を確認する。
直前に整備士が点検したとしても、必ず操縦士二人で確認する義務があるからだ。
チェックリストを確認し終えた財前は、会社から送られてくるデータ(乗客数、貨物の重さと場所、気象状況など)を飛行管理装置のコントロール・ディスプレイに入力する。
奥菜は管制承認伝達席に飛行計画(経路・高度)を伝え、エンジンスタートの許可を得る。
「奥菜、房総半島上空に発達した積乱雲があるから、小まめにチェックを」
「了解」
現在駐機している長崎空港は雲一つない天候だが、羽田空港へと向かう航路の途中にアクティブなCBがあると報告を受けたからだ。
お客様に安心・安全な空の旅を提供するには、最小限の揺れにとどめなければならない。
気流を読み、臨機応変での対応が求められる。
更には到着予定時刻が、羽田空港が混雑する時間帯でもある。
悪天候及び混雑対応など、神経をすり減らすのは必至だ。
ボーイングB777- 300(通称:トリプルセブン)の機種は、大型ワイドボディ双発ジェット機。
金曜日の十七時から二十時の便はどの便もほぼ満席となるため、大勢の命を預かるうえ、大型機は着陸に必要な滑走距離も長くなる。
『乗客三百六十一名、搭乗完了しました』
「乗客三百六十一名、了解」