サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
4 倖せは、思ってる以上に連鎖する
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交換研修医の指導医になって二週間が経ったある日。
「環先生、今日から手術担当代わります」
「山田く~んっ!!」
「俺も、出来るだけ受け持つようにしますね」
「尾崎く~んっ!!」
葛城先輩が不在の中、講習中の医師二人が復帰し、体力の限界値をギリギリのラインで交わせた。
「F大学病院から交換研修医でお世話になってます、元宮 篤志です。山田先生、尾崎先生、どうぞ宜しくお願いします」
「宜しくお願います」
「こちらこそ、宜しくお願いしますっ」
山田 宏人(三十歳)、尾崎 義一(三十一歳)は、元宮と明るく握手を交わした。
「回診お願いしてもいいかな?術前カンファランスがあって」
「はい、大丈夫ですよ」
「ごめんね~、じゃあ、よろしくね」
彩葉は元宮を連れて、集中治療室内の相談室へと向かった。
ICUに入院中の患者がある程度回復したと報告を受け、必要な手術の説明をご家族にするためだ。
本来なら、この手の担当は葛城がしているのだが、不在の間は彩葉が担当している。
*
十九時半を回り、さすがに連日の仕事量で疲労困憊の彩葉。
首をマッサージしながら、隣りのデスクで研修報告書を記入している元宮に声を掛ける。
「元宮くん、今日はもう上がっていいよ」
「……環先生は?」
「私?……もう少しで上がるけど」
「じゃあ、ご飯にでも行きませんか?俺、奢りますんで」
「え?……あ、ごめんね。私、婚約者がいるの、聞いてない?」
「知ってます。看護師さん達が話してますから。物凄いイケメンの御曹司だって」
「っ……」
「別に、環先生を口説こうとか、取って喰おうとか言うんじゃないんですけど。……ダメですか?」