サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
「酒井、機内販売用の物品の会議を設けてくれ」
「承知しました」
機内販売は定期的に変更され、機内での販売は勿論のこと、カタログ販売や宅配も行われている。
その選定された商品は数か月ごとの季節を先取りして会議にかけられ、常にお客様のニーズに合った洗練された商品が設定される。
これも戦略企画部が主導し、営業販売部が担当する。
「本部長、十三時から役員会なので、早めにご昼食になさいますか?」
「……そうだな」
運航乗務がない時の財前は、本部長として目まぐるしい日々を過ごす。
「今日は持って来てるのか?」
「いえ」
「なら、一緒に」
「はい」
机上を片付け、財前は上着を羽織る。
自室を後にし、ターミナル内の巡回を兼ねてレストランなどで食事を済ませるのだ。
羽田空港第二ターミナル五階にあるレストラン街へと向かう途中で、転んだ子供を目撃した財前。
すぐさま駆け寄り、しゃがみ込んで優しく声を掛ける。
「だいじょうぶ?いたいところは?」
子供を起こし上げ、衣服を軽く払う。
目立った外傷は無さそうだが、手に持っていた飛行機の左翼が壊れてしまったようだ。
近くに落ちている左翼を拾い上げた。
『ASJ 戦略企画部 本部長 財前』と記された名札を目にした子供の母親は、深々とお辞儀した。
「すみませんっ、ありがとうございます」
「いえ」
母親に左翼を手渡し、再びしゃがみ込む。
そして、自身の上着のポケットからノベルティグッズを取り出し、男の子に差し出した。
「このひこうきなら、つばさがとれたりしないよ」
空気を吹き込んで膨らませる飛行機。
数年前に機内で配布していたものだ。
「ありがとうございます!ほら、…ありがとうは?」
「ありがとっ」
「どういたしまして。はしるとあぶないから、きをつけてね」