サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
「症状は?」
「交通事故による胸部外傷、胸部CTで肋骨骨折と皮下気腫、血胸が確認できます」
「大量血胸?胸腔ドレナージで安定出来そうな感じ?」
「ギリのラインですかね」
「オペ室、準備出来てる?」
「はい、手配してあります」
「元宮くん、気腫と血胸の処置するから」
「了解」
彩葉はスクラブ着に着替え、元宮と共に胸部外科の当直の山田医師より患者の情報を得ながら救命救急室へと向かう。
ERで救急蘇生が行われ、オペ待ち状態だと報告を受けた。
胸部を強打したことにより肋骨が折れ、それが肺を損傷させたことで肺に血液が溜まる。
肺機能は通常陰圧であり、胸腔内圧の上昇による静脈還流量の低下や肺の圧迫による呼吸不全に陥る。
要するに、肺は内側から外側に膨れ上がるのが正常で、外傷や病気などで中から漏れ出すことにより委縮し、呼吸が正常に保てなくなる。
その箇所を治療することで、肺機能の改善を促すのだ。
*
「環先生、お疲れ様でした」
「山田くんも、お疲れ様」
「胸腔ドレナージ、五回目です。凄く勉強になりました」
「あれは回数こなさないとね」
緊急オペを終え、肩と首を回しながら医局へと戻る。
「あ、そうだ。ケーキ持って来てるから、みんなで食べて」
「え?……いつもすみませんっ、ご馳走様です」
「元宮くんも」
「じゃあ、遠慮なく頂きます」
財前は月に一度程度、羽田空港内やショップで購入したケーキやパンなどを差し入れしている。
恋人を気遣うという面もあるが、空港内のショップの商品を試食する意味合いでもある。
医局に戻ると、時計の針は午前一時ニ十分を差している。
「元宮くん、帰るよ?」
「俺も上がる」
彩葉は指導詳細を入力し終え、着替えるために医局を後にした。