サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
「彩葉先生っ……ハッ……っ…」
通用口から外に出ようとした彩葉を呼び止めた元宮。
走って来たから息を切らしている。
「ちょっと今、……時間貰えますか?」
「……タクシー来るまででいい?」
「ありがとうございますっ!」
彩葉はスマホで迎車依頼をする所だった。
日中なら病院の正面玄関前に待機しているタクシーがいるが、さすがに深夜では呼ばなければいない。
ただ、提携しているタクシー会社に迎車依頼すれば、五分ほどで主要駅にいる空車タクシーが迎車に来るのだ。
彩葉はその迎車予約を済ませ、通用口の外へと出る。
元宮はそんな彩葉の後を追って外へと出た。
「俺、非婚主義だったんですけど、今は、……今すぐにでも結婚したいんです」
「……跡継ぐためだけに?」
「それもありますけど、……やっぱりいつも一緒にいたいから」
元宮は系列の病院で心臓外科医として勤務しているが、有名な循環器専門病院の後継者でもある。
病院を継ぐためには、『女性外科医』との結婚が条件だと言われているらしい。
だからといって、外科医である上、女性として好きになれる女性に巡り会う確率なんて奇跡に近いからと諦めていた。
政略結婚も致し方ないのかもしれないと、現実に打ちのめされていたところに、現れた一人の女性外科医。
まさに運命の出会いだと思った元宮は、何としても結婚へと事を運びたいらしい。
「私にはこれ以上、何も出来ないよ?」
「そこを何とか……」
「郁さっ……、彼を裏切る行為は出来ないって、話したよね?」
「……そこを、何とかっ!お願いしますっ!!」
「拝み倒されても困るんだけど……」
両手を合わせ、頭を深々と下げる元宮。
何度頭を下げられても、答えは同じなのに……。
「ごめん、タクシー来たから。……考えさせて」
「っ?!有難うございますっ!」
「承諾するとは言ってない」
「分かってます」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」