ゼニスブルーの交差点





 悲しんでいるようには聞こえず、いつもの田中さんの声。

「私……とも話してくれて、ありがとうございます」

 か細く、弱々しく、ふっと消されてしまいそうな雪のような儚さ。

「そういうこと言わないでよ。ありがとうって、俺だって言いたんだから」

「……いえ、そんな。お礼……言ってほしくて言ったわけじゃなくて」

 立ち止まって田中さんを見下ろすと、斜め前の紫陽花を静かに見ている。

「甲野君が……」

「何?」




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