ゼニスブルーの交差点




 三年になってから放課後のカウンター業務を引退して、もう中には入れない。

 誰もない館内をゆっくり歩きながら、誰もない二人きりの時間を過ごす。

「もう、ここに来ることもないんだろうな」

「……うん、いつか振り返ると、懐かしくなるんだろうね」

「図書館はつばきさんとの思い出があるから、離れるのが寂しいよ」

 式の最中、嗚咽の響く館内にいて、泣きはしなかったがいろんなことを振り返った。三年でも同じクラスだった、隣の椅子に座る朝貴も、自分と似たような表情をしていた。

「……私ね」

 大好きな本に囲まれた場所で、つばきさんが立ち止まるとゆっくりこちらを見上げてしっかり目が合う。





< 915 / 1,125 >

この作品をシェア

pagetop