彼氏がヒミツにする理由
学校を出てすこし歩いたところで、夏見くんが急に立ち止まった。
「わっ!」
わたしは止まりきれず、彼の背中にぶつかってしまった。
「あっごめん」
「ううん大丈夫。それより、よかったの……?」
春日の前で名前を呼んだり、一緒に帰ろうと誘ったり。
あの春日のことだから、わたしの交友関係に詳しくないにしろ勘づいてもおかしくない。
けっこう危険な行動だったと思う。
街灯に照らされた夏見くんの顔に、わずかに影が落ちた。
「吉葉さんって春日と仲いいよね」
夏見くんはわたしの問いに変化球で返してきた。
というか、答えにもなっていないような?
「仲いいっていうか……同じ部活だから」
「知ってる」
「それに、春日はすんちゃんの彼氏で……。すんちゃんっていうのは、」
「吉葉さんの友だちでしょ。それも知ってる」
そうだった。
夏見くんにはすでに話していたんだった。