彼氏がヒミツにする理由
夏見くんから告白されたのと時を同じくして、すんちゃんの告白は成功していた。
すんちゃんから
『つき合うことになったぁ!キューピッドになってくれてありがとう!』
と文字だけでわかる浮かれメッセージが入ったとき、そばには夏見くんもいた。
わたしと春日の関係は夏見くんも知っているはず。
それじゃあ……。
「……あっ、春日に口止めしとけってこと?」
夏見くんは首を横に振った。
「そういうことじゃなくて、」
「?」
「……ごめん。いいなってちょっと羨ましく思っただけだから」
引きつった筋肉を無理に動かすようにして一笑した夏見くん。
するりと手を離して再び歩き出した。
……羨ましく?
それって、自分もそうありたいと願っているってこと?
離れてぬくもりを失った手。
まだ耳にこびりついている『天!』と呼ぶ声。
夏見くんとつき合えるだけで嬉しい。
そばにいられるだけでいい。
──そう思っているのに……。
夏見くんの行動が、言葉が、わたしに心の隙を与えてくる。
想いをまっすぐに向けられれば向けられるほど、矛盾が大きくなっていく。
秘密にするのがイヤなわけじゃない。
わたしは理由が知りたいだけ。
夏見くん、どうして秘密にするの?