彼氏がヒミツにする理由
彼氏のひみつ〈夏見Side〉
初めて見たときから彼女は夏のような笑顔を見せていた。
太陽と直球に表現するよりは、夏の海面にキラキラきらめく太陽の光のような笑顔。
みんな同じように笑っていても、彼女の笑顔だけが特別に見えて。
“1年の吉葉さん”としか知らない彼女に、俺は心を奪われた。
一目惚れだったんだ。
だけど、同じ中学校で同じ学年で……広い世界でせっかく同じコミュニティにいるのに、たった1つ──クラスが違うだけで接点を作れなかった。
話しかけようにも、なにか話題や共通点があればいいんだけどなにもないから、話しかけたら気持ちがバレてしまうんじゃないかと、臆病になって話しかけられなかった。
“ありがとう”
落としものを拾って、あいさつ程度のちょっとした言葉を交わしたことはあるけれど、それだけ。
同級生以下はあり得ても、同級生以上であることは絶対にない──そんな関係だった。