彼氏がヒミツにする理由
冬の初め頃、俺と母さんは花園家に引っ越した。
問題が発覚したのはそのあとだ。
それまで花園さんがどういう人か知らなかった。
一緒に暮らすようになってわかったのは、彼女には向かいの家に住む幼なじみの彼氏がいることと、とにかくおしゃべりだってこと。
学校で起きたことを親に自ら話す人と聞かれるまで話さない人、聞かれても話したくない人がいるとして、花園さんは積極的に話をするタイプの人間だった。
家族が囲む食卓での話題に学校の話を持ち出してくるし、恋愛や友情の悩み相談なんかも赤裸々に語る。
俺は聞かれても話さないタイプだから、花園さんを理解できなかった。
理解できないだけならいいんだけど、俺のことも家族に話すから、被害を被っている以上勝手にしてとはならなかった。
「誰々が夏見を好きらしいよ」とか。本当にやめてほしい。
だから、吉葉さんとつき合うことになったとき。
もしこのままつき合ったら絶対に花園さんの耳に届くし、親に知られるのも時間の問題だと思った。
吉葉さんとのことを話のネタにされたくない。
俺は言った。
“つき合うこと、学校では秘密にしていい?”