彼氏がヒミツにする理由
「わたしと花園さんなら、花園さんが本命に決まってるじゃん」
「いや、稀に複数の本命を作れる男がいる」
余計なひとことどころか、知りたくなかった男の真実を凶器に心を抉ってくる。
今のわたしには彼をグーパンチする気力もない。
「つーかさ、夏見に聞くしかなくない?」
「花園さんとつき合ってるのかって?」
「そう。それが秘密にする理由なら、今度こそ本当のこと話してくれるだろ」
春日の助言は、昨日からずっと考えて出したわたしの結論と一緒だった。
いくらここで悩んだところで答えは転がっていない。
それならやっぱり、辛いけれど向きあうしかないんだ。
「そうだよね……。ありがとう。なんかあったら慰めてね」
「慰めねーよ。自分の足で立ちなおれ」
「冷たい!わたしがすんちゃんとの仲を取りもってあげたのに?」
「言っとくけど、それ俺べつに感謝してねーからな。勝手に恩着せんな」
春日は憎まれ口を置き土産に戻っていった。
口は悪いけれど、彼なりに背中を押しているつもりなんだろう……と思うことにする。
部活が終わったあと、あのカフェで夏見くんと待ちあわせしているから、そのときに聞こう。