彼氏がヒミツにする理由
わたしがあからさまに安堵するのに対し、夏見くんは目を見開いて驚いている。
「なにしてるの?」
「あっ……ううん、なんでもない」
夏見くんから問われて、絡めていた両手をぱっと離してごまかした。
──ガタン。
すると、夏見くんが椅子を引いて座った。
なぜかわたしの前の席に……。
夏見くんは、ぎゅっと掴みとるように視線を合わせてきた。
「吉葉さん、好きな人いるの?」
「え?」
「そのチョコ……」
わたしに向けていた視線を落とす。
つられてわたしも視線を下げると……すんちゃんにもらったチョコがあった。
「い、いないよ!これは友だちからもらったチョコ」
「友だち?」
「うん。もちろん同性のね」
すんちゃん、料理同好会だから……。
こだわりがラッピングにも現れていて、本命チョコに間違われちゃった。