彼氏がヒミツにする理由
「彼氏は?いないの?」
「いないよ、全然いない。むしろ1人もできたことない。……ってこんなこと言うと、笑われちゃうかな」
わたしの周りの友だちは一度はだれかとつき合った経験があるみたいで、『まだだれともつき合ったことがない』っていうと驚いた顔をされる。
「別に笑わないよ。俺もできたことないし」
「えっ!夏見くんも!?」
それはちょっと意外。
……って、わたしも友だちと同じ反応をしてしまった。
「おかしい?」
「いやおかしいっていうか……夏見くん、かっこよくてすごくモテるじゃん。中学のとき、わたしの周りにも夏見くんが好きって子いっぱいいたし、今も……」
あっ……でも……。
わたしはそこまで言って思い出した。
夏見くんは女嫌いなのでは?と噂されていることを。
彼女ができないんじゃなくて、あえて作らないのかもしれない。
「そうなんだ。でも俺、かっこよくないよ」
「謙遜?夏見くんはすっごくかっこいいよ」
夏見くんが好きって言う子は、もちろん恋愛感情として好きという子もいたけれど、中にはアイドルやキャラクターに対するものと同じ好きを抱いている子もいた。
それほどたくさんの人を魅了する力が、夏見くんにはあるんだと思う。