弱小流派の陰陽姫【完】
「小田切って百合姫狙いだった?」
「んなわけねーよ。恐ろしい。いつも一緒なのにいねーなって思っただけ」
百合緋はまさしく美少女という感じで、想っている男子はかなりいる。
だが、完璧な白桜が常に傍にいるため、誰も相手にされていない。
煌は特段百合緋に感情があるわけではないので、色んな人を敵に回しそうなそんな誤解は避けたい。
ああ、と白桜が答える。
「百合姫は今日休みだよ。たまにこういうことあったはずなんだけど」
「そうだっけ? いつも水旧見てるわけじゃないから気づかんかったわ」
「……二人……仲良さそう……」
再び、月音が皿のような目で煌と白桜を見てきた。
なんでその目をするときカタコトみたいになるんだろう。
「俺としては月御門のこと勝手に友達だと思ってたし。月音ちゃんの月御門慕いが異常なだけで普通だよ、これ」
「そう……なんだ……」
まだ皿のような目をしている月音。
いい加減面白いからやめてほしい。さっきから笑いそうになってるんだよ。
「俺としては月音ともそれくらい仲良くなりたいけど?」
「はううううっ!」
白桜、追撃。本当に容赦ねーな……。
そして絶対面白がっているだろ。
今度は邪気のない顔でにこにこする白桜と、心臓を押さえる月音。
くそ、楽しそうで腹立つ。
「まあ俺が何を言いたかって言うと、黒が二人に迷惑かけてないかなってことなんだ」
「え――そうだったの?」
応じた煌の声は間が抜けていた。
さっきまで腹黒オーラを出していた白桜が、心底から心配しているような表情で言ってきた。
それにしてはずいぶんまわりくどいことを。
「黒は――まあ生まれに色々あって、友達らしい友達もいなかったみたいで。ここに転校してきて割とすぐに小田切と月音と一緒にいるの見かけるようになって、安心してたのは本当なんだ。だから二人に余計なことしてないかとか、迷惑かけてないかなって、聞いておきたくて」
もしかして月音に話しかけた本当の理由って、それ? と煌は頭の片隅で考えた。
……まわりくどすぎるだろう。