弱小流派の陰陽姫【完】
「御門のご当主、小路の若君。大変お世話になりました。それから、ご迷惑をおかけしました」
頭を下げた碧人に、白桜が顎を引いた。
「解決するのなら問題ない。だが、真実を知らないことは時として罪になる。くれぐれもはかり違えないように」
「はい」
何十も年上の碧人に説教をする白桜は、かけらも臆したところがない。
大人相手の対応も慣れたもののようだ。
若年(じゃくねん)ながら御門流当主として、己の格を落とさずに。
「月音、これから大変だろうが、学内には俺と黒がいる。流派違いではあるが、力になれればと思っている」
白桜に言葉をかけられて、月音はキラキラした眼差しで白桜を見る。
彼氏になったばかりの煌、もやっとする。
(……いや、月音ちゃんの月御門慕いはこじらせてるくらいだし、今更とやかく言っても仕方ない。そう、仕方ない。そう思い込め、俺)
頭の中でどうにか片付けようとしていたら、不意に視線を感じた。
そのもとをたどると、月音が煌を見上げていた。いつの間に。
それから白桜を見る月音。
「ありがとうございます、白桜様。でも、小田切くんがいてくれるので、きっと大丈夫です」
不意を衝かれた。
月音の言葉は煌には予想外で、咄嗟に言葉を返せなかった。
「そうか。なら、心配はいらないな」
鷹揚(おうよう)にうなずいた白桜が、視線を煌に寄越した。
それに気づいた煌は慌てて首を縦に振る。
そう、俺がいるから大丈夫、と。