弱小流派の陰陽姫【完】
6 ここからはじまる
「行ってきま……小田切くん!?」
自分の家の玄関扉を開けるなり目についた姿に、月音は頓狂な声を出した。
「おはよう、月音ちゃん」
門扉のあたりで待っていたのは煌だった。
「おはようっ。どうしたの? また何か悪いものに憑かれちゃった?」
月音が小走りになってやってきて、門を押す。
「いや……普通に、迎えに?」
煌に言葉に、月音は首を傾げた。
「なんで疑問符?」
「俺もわからんから、その……付き合ってる人がどうするか、とか……」
「あ……」
しゅかああっと、月音の頬が朱に染まる。そ、そういう意味だったか……と。
煌は、赤くなる顔を振り切って月音に言った。
「ただ……早く逢いたかったので」
「さ、さようですか……」
照れた煌と恥ずかしい月音なので、お互いぎこちない。
「碧人様に了解はもらってるから。朝来ること」
「そ、そうなんだ。ありがとうっ」
お互い、顔をまともに見ることも出来ていない。
「おはよう、煌くん」
そんなたどたどしい雰囲気の中、碧人の声がした。
「お、おはようございます」
玄関から出てきたスーツ姿の碧人がにこりとする。
「朝からありがとう。月音には黙っておいてみたよ」
「言ってくださいよ! 朝から私の心臓壊す気ですか父様!」
月音に噛みつかれても、碧人は「あははー」と笑うだけだった。
「まあ、仲良くね」
そう言って、楽しそうに先に一人で行ってしまった。
残された煌と月音はお互いを見られないでいたが、そっとあげた視線が同じタイミングでぶつかって、またさっと顔をそむけた。