弱小流派の陰陽姫【完】
「驚くどころか私が偽物だと思われるんじゃないかな……」
「ああ……ありそうだね。そういえば昨日の髪とか、水旧がやったの?」
「うん、百合緋ちゃん人を飾り立てるの好きなんだって。すごいよね」
なにげに呼び方が変わっている。
白桜や黒藤には頑としてうなずかなかったのに。
「そっか。よかったね。すごく似合ってた」
「あ、ありがとう……っ」
「その……ちなみに兄さん、今なにか言ってる?」
「えーっと……『あの程度で煌に色目使ったと思うなよクソガキ』……って言ってる」
「兄さん口悪っ! ごめんね月音ちゃん! 可愛かった! すごく可愛かったから!」
「ありがとう……連呼されるのはちょっと恥ずかしいですが……。でも私、相当嫌われてるようだね。けど小田切くんを護るのは私だ! いざとなればお兄様と一騎打ちするよ」
「変な対抗心燃やさなくていいからねっ!? ……俺、兄さんの言葉理解できるようになるよ、絶対。禊でも滝行でもなんでもする。そんで説得する」
「説得?」
「うん。月音ちゃんを花嫁さんにする、説得」
「あ……う……」
月音がいつもの混乱状態になってしまった。
煌は月音に微笑みかける。
「約束」
「……約束?」
月音が気恥ずかしそうに返すと、煌はうなずいた。
「そう、絶対叶える約束」
「……うんっ。私もお兄様に勝つ約束叶えるからねっ」
「それはあんま叶えなくていいよ。……兄さんに認められる方ないいけど」
「絶対叶えるそれ!」
いつも通り、なんでもない話に花を咲かせながら。
隣にいる二人。約束をして、叶えて、また、約束をして……。
重ねていく、未来。
END