【短】甘いチョコにとびきりの愛を込めて。
「ん」
妃野にお礼を言われたのは2回目。
どちらも、心から言っているように聞こえた。
透き通る声みたいに純粋で、悪い気にはならなかった。
気が抜けて肩の力が抜けると、冷たい風が吹いて体が震えた。
さすがにこの寒さで水を浴びるのはやばかったな。
「このままじゃ風邪引いちゃう! わたしのハンカチでよければ使って?」
ポケットから薄い花柄のハンカチを出して渡してくれた。
「いや、いい。よごれるぞ」
「それよりも戸松くんの体調のほうが心配だよ。マフラーもあるから巻いて!」
俺が断っても貫き通す妃野。
寒くてマフラーをしていたはずなのに、外して俺に渡す。
ここまでしてくれるなら仕方ない。
ありがたく受け取るか。
「あぁ」
借りたハンカチで首の水気をとった。
そこにマフラーを巻けば、少しだけ寒さをしのげた。
……妃野の体温が残ってて、暖かく感じる。
「愛華。とりあえず保健室に連れて行ったほうがいいんじゃない?」