【短】甘いチョコにとびきりの愛を込めて。


紙袋に入ったゼリーを見て思い出した。



「あ! うん! 間違えてたこと、ちゃんと伝えたよ」



伝えたんだ。


てか、話したんだ。


どうしてか嬉しそうに話す妃野に胸が痛くなった。

なんだ? このモヤモヤする感じ。


俺から聞いたのに。



「……でも、返しちゃった」



今度は申し訳なさそうに切なく笑った。



「わたしからのバレンタインチョコが欲しかったんだって。義理で男の子にあげるつもりなくて……ね」



それは……嫌だな。

直接渡さず、お返しも欲しいとか。



「そっか」



だけど、それを聞いてどこか安心してる自分がいた。



「本当はね、好きな人にチョコをあげるの憧れるんだ」



今度は頬を赤くして照れたように笑う。

妃野もそういうの憧れてるんだ。


「夢見すぎだから好きな人できないのかな?」

< 20 / 56 >

この作品をシェア

pagetop