私じゃダメだよ
 1番に廊下に出ると、

 「おっ、栗林! 卒業おめでとう」
 
 あぁ、目の前に1番会いたくなかった人が立っている

 「、、、ありがとうございます。
  急いでいるので失礼します。」

 まさか会えるとは思っていなくて、
 準備していなかった言葉はたどたどしい

 緊張しているのがバレバレで視線を上げられない

 「待てって。お前、俺に本、貸したままだろ。
  返さなきゃと思って待ってた」

 

やっと視線を上げると先生と目があった

 少し首を傾げてから、「行くぞ」と歩き出す背中についていく

 こうやって一緒に歩くことも、、、最後、、、なんだね

 少しでも一緒にいたくてゆっくり歩いてしまう

 ほらね、そしたら先生はすぐに立ち止まって

 「速かった?荷物待つから貸して」

 って、そんなに優しくしないでください

 少しは嫌いになる理由をくれたっていいじゃない
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